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春の珍事
  −ロドリゴ掠め取り事件−

2003.03.11

 いよいよ、シーズン開幕と思ったら、よりによってスゴイ珍事が起こった。言うまでも無く、ナビスコカップ、サンガ−トリニータ戦におけるロドリゴによる返却ボール掠め取り事件である。これは日本サッカー史において、78年JSL2部読売ー日産戦のラモス激怒追い掛け回し事件、86年JSL1部三菱−全日空戦の全日空8人キックオフ事件と並ぶ、珍事件だろう。当日、西京極におられた方々を、ただひたすら羨望するものである。冗談でなく羨ましい。
 私は後者の全日空事件の試合を観戦したが、友人に今でも羨ましがられる。一方で、ラモスが日産選手を追い掛け回した試合は、後日のラモス及び両チームの栄華を考えると、実に味わい深い。あのラモスの奮闘を観戦した友人の自慢話は、我々の羨望の的だ。
 もっとも、この珍事件をユーモラスにではなく、真剣に問題視している向きが多いのに驚かされた。まあ、人には人それぞれの考えがあるから、このような厄介な事件を私のように面白がる人だけではないのはわからなくもない。と言う事で、この珍事件を私なりに整理してみた。

 まず主審。ゴールを認めるべきであろうか。私は正解を持たないが、常識的なルールの運用としては、認めざるを得ないだろう。全てはインプレイ中の出来事だからだ。スローインが正常に行われ、インプレイになった以上は、主審とは言え容易にはプレイを止める事は難しい。
 ロドリゴ的なプレイをされてしまえば、現状のルールの範囲下では、主審とは言え阻止は困難であろう。

 次にサンガ守備陣。一部に「あの場面で真剣に守らないのはけしからん」と言う評論があるようだが、そうは言ってもねえ。まあ、「どんな状況でも気を抜いてはいけない」と言うのは簡単だが、サッカーは機械がやっているのではないのだから。もし、GK平井があの場面でペナルティエリアで反則覚悟のプレイをしていた場合、主審の悩みはピークに達したであろう。

 トリニータのフリーキッカー。「もっと、わかりやすいボールを蹴れ」と言う声もあるみたいだが、これまた無茶な話だ。まあ、次回以降はせいぜいゴールラインを割るくらいの強いボールを蹴ってください。もっとも、そのボールが枠に行ってしまって、GKを破ったらどうしよう。
 
 ロドリゴ。これは馬鹿だ。私は最初ニュースを見聞きした時は、単に間違えたのだと思った。そのような勘違いはたまにある事だ。あるいはそのような判断の悪い選手もいるものだ。しかし、私が「馬鹿」と断定するのは、試合終了後のコメント。「狙っていた」と言う趣旨の発言があったようだ。この発言は愚かとしかいいようがない。あの場面でわざとゴールし、試合後に「うっかりしていた、申し訳ない」と言うならば、知性あふれるプレイとも言えるが。ホンネを言ってはおしまい。トリニータは、この不適切な発言に対して(不適切なプレイにではないですよ)、何がしかの処罰を考えるべきだと思う。
 もっとも、悪いのはトリニータの広報担当なり通訳だろう。ロドリゴが何を喋ろうが「うっかり」と言えばよかったのに。
 いずれにせよ、ロドリゴはこれで日本サッカー史に残る存在となった事は間違いないが。

 と言う事で小林監督。何よりこれが珍事件で片付いたのは、トリニータ監督の小林氏の素晴らしい判断の賜物ある。小林氏は「サッカー」を救ってくれた。速やかな判断だっただけに、時間のロスもほとんどなく、本来のゲームが復活したはず。今シーズンの「年間最高殊勲判断賞」を氏に捧げたい。
 以前、プレミアでアーセナルが同様のゴールを上げてしまった試合後、アルセーヌ・ベンゲル氏が再試合を提案した事があったが、小林氏の方が格段に優れた判断だった。怪盗より名探偵助手の方が冴えていると言う事か(つまらんギャグです。気にしないで下さい)。

 ところで、「半公営ギャンブルの結果に影響する可能性があるので問題だ」と言う意見に対しても一言。特に私のようなサッカー狂は、確かに「サッカーの見地」からしか物を考えない悪癖がある。したがって、ギャンブル的見地からの考えを否定はしない。しかし、適切な対応案あるいは代案があるのだろうか。私には思いつかないし、適切な意見も出ていないようだ。文句をつけるのは簡単だが、ロクな対応案、代案がないならば、「サッカーの見地」に従って欲しい。
 例えば、この試合をトト対象外にすればよかったのか。一気に当選確率が高まり儲けが減る事で、サンガの2−1、2−2、3−2に賭けていた人それぞれからクレームが出る。大体、トトは競馬や競輪と異なり、「当たる事」ではなくて「当たらない事」、「そして当たった時に信じ難い高額が提供される事」に妙味があるのだ。せっかくギャンブルを通してサッカーに興味を持ってくれた方には大変申し訳ないが、そのような不満あるいは問題意識を持つ人は、他のギャンブルを愉しんで下さいとしか言いようがない。
 では、小林氏が「同点ゴール」を指示しなければよかったのか?そのような発言をする人に私は問いたい。小林氏は
「トトゴール対象試合では同点ゴールを指示してはいけなく、トト対象試合では同点ゴールを指示すべきだったのでしょうか。」


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Authored by Fumio Muto ; 2003 March 10; 武藤へ一言
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